けやきの郷には、毎年、海外から多くの見学の方がお出でになります。
中でも、北京市自閉症児リハビリテーション協会との交流は深く、副会長の朱春燕さんは、けやきの郷の「集団自立」に深く賛同し、北京での成人施設の設立をめざして、けやきの郷を4回見学。この10月には、北京での講演・発表を要請され、けやきの郷から5名のメンバー(伊得やまびこ製作所所長、川口やまびこ製作所職員、小笠原グループホーム施設長、白井和子評議員、真木さん親子)が訪中、大きな反響を呼びました。以下、代表して、伊得やまびこ製作所所長の報告を掲載します。
北京市自閉症児リハビリテーション協会との交流会に参加して
10月16日から20日まで、中華人民共和国・北京市自閉症児リハビリテーション協会(以下「協会」という)の招聘により、けやきの郷代表(5名)として訪中しました。
訪中の最大の目的は、北京大学医学部構内にあります講堂で18日に協会主催による、けやきの郷実践報告並びに北京市を中心とした全国から集った自閉症の子どもを持つ親・障害者施設を運営する経営者や支援者・学校の先生・医師等、障害者の社会参加と自立に向け積極的に関わりを持たれている方々との意見交換・交流にありました。
交流会において最初に、贾美香会長より私たち訪中メンバー1人ひとりの丁寧な紹介をして頂き、私は、なるほど歴史と文化を重んじる国の方というのは、このようにして客人を心から大切にされるのかと、そのおもてなしの心に感動いたしました。
ここで贾会長は、2006年10月に日本自閉症協会の招聘により訪日した折、けやきの郷訪問の感想を次のように話されました。
「けやきの郷の創立、それはどれほどの困難な道のりであったことでしょうか?須田理事長・阿部常務理事を中心とした親たち(特に母親)21名があの住民からの強烈な反対運動に屈しなかったエネルギーはいったいどこからきたのでしょう。それは当時まだまだ日本社会において理解されていなかった自閉症という障害を持つ我が子のため、そして行動問題を抱え先の見えないトンネルの中で苦しむ全国の母子のため、これから活きいきと安心して暮らせる場を作り残すとのだという強い思いがあったからであると私は考えます。
そのように考える事が出来たのは、実際にけやきの郷を訪問し、重い自閉症の人たちが集団自立という法人の理念のもと、実に溌剌と誇りと自信に満ち溢れて仕事をしている姿を見ることが出来たからです。
そして,このような施設を北京市にも創りたいという思いを強くしました。いつの日かけやきの郷の代表者をお招きし直接多くの方々にけやきの郷の実践についてお話しして頂ける機会をと考えておりましたところ、当協会の朱春燕副会長のご尽力によりまして、本日このように現実のものとすることが出来ました。
中国においては、まだ自閉症の人たちにとって充実した成人の施設はありません。社会的にも障害者理解は進んでいないのです。
今日は、けやきの郷から学び、そして中日の友好と自閉症児・者の幸せのために、手と手を取り合って共々に頑張って参りましょう。
須田先生・阿部先生ありがとうございます。
両先生にくれぐれもよろしくお伝えください。謝謝」
実に謙虚な御挨拶に贾会長の高貴な人格を感じるとともに、私個人にとりましては、最後の両先生にくれぐれもよろしくお伝えくださいとのご伝言は、有名な中国の故事「水を飲む人は井戸を掘った人の恩を忘れない」を思い出させて頂くものとなりました。
このような中での、けやきの郷実践報告となり責任の重さをさらに強く感じることとなりました。
交流進め、信頼関係を強化
はじめに、当法人の阿部常務理事より預かったビデオメッセージで、けやきの郷全体の事業所説明と理念の中心にある「集団自立」について紹介をしました。
次に、私から、やまびこ製作所の実践をNHKの首都圏ネットワークで放映されたビデオや事業所パンフレットを使いながら集団自立の具現化に重きを置いて話をさせていただきました。また、創業する事の困難さ、安定的に事業運営を推進していく上での試練、それらを乗り越えていく力となった中国の故事「愚公移山」(この扁額が、初雁の家の玄関に飾られています)、今後さらに自閉症の人たちの所得の保障のための取り組みを多角的に進めていく決意を述べました。
そして、小笠原施設長・白井和子さんの話の後、質問会となりました。
現在の中国における成人期障害者支援施設はまだ充実したものになってないとの背景から、働くことの本人への動機づけ・性に関する事等、また施設の運営費及び運営状況についても活発な議論が交わされました。
休憩時のフロアーでのことでしたが、江蘇省南京市から10時間かけて参加してくれた重度の自閉症の子をもつお母さんが、やまびこ製作所で一生懸命に材木運びをするメンバーに感激と感動した様子で、我が子と共に生きていく勇気と力を頂きましたと私に話してくれたのが、強く心に残っています。
今回の訪中では、けやきの郷に対する過分な評価を受けてしまいましたが、すべて私たち職員への激励と受け止め、今回の経験を日常支援にそして各事業所の運営と発展のために生かしていくとともに、中国との更なる友好交流を広げて参りたいと思います。
結びに、この度の訪中において、お世話になりました両国のすべての方々、特に通訳として、また旅の安全にも様々心配りをして頂きました、朱春燕副会長に最大の感謝と御礼を申し上げます。
皆様、本当にありがとうございました。
社会福祉法人 けやきの郷
就労支援A型事業所
やまびこ製作所
所長 伊得 正則